機構そのものにモータを内蔵する“ビルトインモータ”は、従来構成の制約を解消し、小型化・省スペース化・設計自由度の拡大を同時に実現する新しい駆動方式です。インホイール技術の発展形として、多用途への汎用化が期待されます。本稿では、その可能性と応用展開を紹介します。
産業機器や搬送装置の設計では、近年「機構の小型化」「省スペース化」「応答性向上」が強く求められている。従来はモータ+減速機+伝達機構という構成が一般的であったが、この方式ではどうしても部品点数が多く、設計自由度が制約されてしまう。
そこで注目されるのが、モータを機構そのものに“ビルトイン(内蔵)する”という設計思想である。
これは、インホイールモータの概念をさらに発展させたもので、プーリーやスプロケットだけでなく、回転体・機構部品そのものをロータ化し、ステータを筐体側に一体化するというアプローチだ。
① 圧倒的な小型化と省スペース化
モータを機構内部に組み込むことで、従来必要だった
・モータ取付スペース
・カップリング
・シャフト
・外付けプーリー/スプロケットが不要になる。
結果として、装置全体の体積を数十%削減できるケースも珍しくない。
② 汎用化とモジュール化による採用のしやすさ
ビルトインモータは、
・標準化された外径
・汎用的な取付面
・共通の電気仕様
を持つことで、多用途に横展開できる“モジュール”として成立する。
従来の「用途ごとに専用モータを設計する」方式から脱却し、
月数千台規模の安定した量産市場を形成できる。
③ 設計自由度の飛躍的向上
モータを“機構の一部”として扱えるため、
・回転軸の位置
・機構のレイアウト
・装置の形状
を自由に設計できる。
特にロボット、AGV、搬送機器では、モータ配置の制約が消えることが大きなメリットとなる。
ビルトインモータの採用が装置設計の融通性と装置の小型化を実現
・ロボット関節(ギア・ハウジング一体型モータ)
・AGV/AMRの駆動ユニット(ホイールハブ一体型)
・自動倉庫の昇降・搬送ユニット
・小型コンプレッサー・ポンプの直結駆動
・フィットネスマシンの負荷制御ユニット
・医療機器の静音駆動部
・自転車・軽車両のハブモータ
・ドローンのロータ一体型モータ
これらはすべて、小型・中出力のビルトインモータが最も効果を発揮する領域である。
インホイールモータが自動車用途に限定されて市場拡大が難しい一方、ビルトインモータは産業機器・搬送機器・ロボットなど多分野に展開できる。
その結果、月数千台規模の安定した汎用市場が成立する。
これは、インホイールモータ技術を“車輪の外”へ解放し、新しい駆動設計の世界を拓く取り組みである。
インホイールモータの本質は、回転体にモータを内蔵し、伝達系を最短化することによる性能向上である。
その思想をさらに推し進め、機構そのものにモータをビルトインすることで、
小型化・汎用化・設計自由度の拡大を同時に実現できる。
インホイールモータの考えかたとビルトインモータというカラチで、産業機器全体へと広く展開していく未来を描きたい。
プーリー/スプロケット内蔵モータが拓く新しい駆動設計の世界