電力半導体の世界では、Si(シリコン) → SiC(炭化ケイ素) → GaN(窒化ガリウム という材料の進化が進んでいます。 しかし、「SiCとGaNはどちらが優れているのか?」、「600V系DCBLにはどの材料が最適なのか?」 といった質問には、材料特性と用途を正しく理解しないと答えられません。
本記事では、Si / SiC / GaN の材料特性を比較し、600V系ブラシレスモータに最適な材料を明確にします。
600V系ブラシレスモータに最適なインバータ素子とは? で説明した通り、IGBTやMOSFETは 素子構造 の話であり、Si / SiC / GaN は 半導体材料の話です。
つまり、構造(IGBT / MOSFET) × 材料(Si / SiC / GaN) という掛け算で素子が決まります。
例:
・Si-IGBT
・Si-MOSFET
・SiC-MOSFET
・GaN-HEMT(GaN-FET)
・SiC-IGBT(高耐圧領域で存在)
※HEMT(High Electron Mobility Transistor)高電子移動度トランジスタ。
高い電子移動度をもつ半導体材料を用いたトランジスタで、高速スイッチング(高周波動作)が可能。
Si MOSFETと比較して、GaN HEMTは大幅なスイッチング損失低減を実現。
まずは材料としての基本性能を比較します。

✔SiC:高電圧・高温・高出力に最適
✔GaN:高周波・低電流に最適
✔Si :従来の標準材料
【Si(シリコン)】
・低コスト
・技術成熟
・低〜中電圧
・大電流対応は可能だが損失が大きい
→ 従来の産業用途の主役
【SiC(炭化ケイ素)】
・高耐圧
・高温動作
・高効率
・大電流に強い
・サージ耐性が高い
→ 600V〜数kVの高電圧・高出力用途に最適
【GaN(窒化ガリウム)】
・超高速スイッチング
・超低損失
・高周波に強い
・低電流・低インダクタンス環境で真価を発揮
→ USB充電器・DC-DC電源などの高周波電源に最適
GaNは優れた材料ですが、600V系DCBL(5〜10kW級)には向きません。
理由は以下の通り。
①大電流デバイスが少ない
DCBLでは数十〜数百Aが流れますが、GaNは大電流デバイスがまだ少ない。
②逆回生電流に弱い
モータ駆動では必ずリバースリカバリ電流(逆回生電流)が流れます。
GaNはこれに弱く、破壊しやすい。
③サージ電圧に弱い
DCBLのケーブル反射で600V → 1000V級のサージが発生することもある。
GaNはこの環境に不向き。
④高周波性能が活かせない
DCBLのスイッチング周波数は一般に 5〜20kHz 程度。
GaNの強みであるMHz級の高速スイッチングが活かせない。

Si / SiC / GaN はそれぞれ得意分野が異なります。
・Si:従来の標準材料
・SiC:高電圧・高出力・高温に最適(600V系BLDCの主役)
・GaN:高周波・低電流用途に最適(BLDC用途では脇役)
600V系DCBLでは、SiC-MOSFETが最もバランスが良く、性能を最大化できる材料 です。
600V系ブラシレスモータが使われる理由は600V系ブラシレスモータとは?をご覧ください。
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