防滴・防水仕様のモータや回転機器では、軸周りの防水性と防塵性が信頼性を大きく左右します。 その中でもベアリングシールは、『水滴の侵入』、『粉塵の侵入』、『グリース漏れ』、『ベアリングの早期摩耗』 を防ぐための最重要部品です。 しかし、シールには複数の種類があり、材質もNBR・FKM・PTFEなど多岐にわたるため、「どれを選べばよいか」が分かりにくいのが現場の実情です。
このコラムでは、JIS規格に基づいてベアリングシールの種類と材質を体系的に整理し、用途別の選定ポイントを技術者向けに解説します。
JISでは、ベアリングのシール構造を以下のように分類しています。
① オープン(Open)
・シールなし
・摩擦が最も少ない
・防塵・防水性はゼロ
・高速回転・低トルク用途向け
→ 防滴・防水用途には不向き
② シールド(Shield)
金属板(鋼板)でベアリングを覆う構造。
ZZ(両側金属シールド)
・金属板で粉塵を防ぐ
・水滴は防げない
・摩擦はほぼゼロ
・高速回転向け
→ 防滴用途では不十分(IPX1〜X2程度)
Z(片側金属シールド)
・片側のみシールド
・反対側はオープン
→ 防滴用途では使わない
③ 接触シール(Contact Seal)
ゴム(NBR・FKM)で接触しながら密閉する構造。
2RS(両側ゴム接触シール)
・防水性が高い
・グリース保持力が強い
・摩擦はやや大きい
防滴〜防水用途に最適
→ 防滴モータでは最も推奨される
RS(片側ゴム接触シール)
片側のみシール
→ 軸方向の水滴が片側から来る場合に使用
④ 非接触シール(Non-contact Seal)
ゴムが接触せず、隙間で防塵する構造。
LLB / LLU(メーカー独自規格)
・摩擦が少ない
・防水性は接触型より低い
→ 防滴用途なら可、防水用途には不向き

注:温度は材料グレードによって変わる概略値です。耐油性・耐水性・耐薬品性も、油種、薬品、温度、浸漬時間などで異なります。PTFEはゴムと同じ評価方法では比較しにくく、シール構造を含めた評価が必要です。
🔹 NBR(ニトリルゴム)
一般的な防滴モータ向けの標準候補。
ただし高温環境では硬化しやすく、長期使用では劣化に注意が必要です。
🔹 ACM(アクリルゴム)
油が付着し、NBRでは耐熱性が不足する場合の候補。
エステル系オイルでは膨潤する場合があるので注意が必要。
🔹 FKM(フッ素ゴム)
高温・耐薬品・耐油性を重視する場合の候補。
🔹 EPDM(エチレンプロピレンゴム)
油との接触がなく、水・蒸気への耐性を重視する場合の候補。
食品機械や洗浄設備に適している。
🔹 PTFE(フッ素樹脂)
低摩擦・耐薬品性に優れる。
クリープや接触圧の確保を考慮した構造設計が必要
① 防滴モータ(IPX1〜X4)
推奨:2RS(NBR)
理由:
・水滴・飛沫を確実に防ぐ
・コストと性能のバランスが良い
・グリース保持力が高い
② 防水モータ(IPX7〜X9K)
推奨:2RS(FKM)+ラビリンス構造
理由:
・高温水・高圧水に耐える
・水没時の圧力変動に強い
・経年劣化が少ない
③ 油・薬品がある環境
推奨:FKM or PTFE
理由:
・NBRは油で膨潤し、シール性が低下する
・FKMは油・薬品に強い
④ 高速回転
推奨:非接触シール(LLB)+外側にラビリンス
理由:
・摩擦損失を抑えられる
・外側で水滴を遮断する構造が必要
※IP保護等級についてはこちら【第1回】防塵・防水規格「IPコード」について
ベアリングシールは、
・シール構造(ZZ / 2RS / LLB)
・材質(NBR / FKM / EPDM / PTFE)
・使用環境(温度・水・油・薬品)
・モータ構造(軸周り・ラビリンス)
を総合的に判断して選定する必要があります。
特に防滴・防水モータでは、2RS(接触型)+材質選定(NBR or FKM)+軸周りのラビリンス構造が信頼性を大きく左右します。
ラビリンス構造についてはこちら【第9回】ラビリンス構造と防水設計における役割