600V系ブラシレスモータ(BLDC)をインバータで駆動する際、最も見落とされやすく、最も故障原因になりやすいのが「サージ電圧」 です。 特に、SiC-MOSFET × 高dv/dt × 長いモータケーブル という組み合わせは、絶縁破壊・コロナ放電・巻線ショートの主要因になります。
本記事では、サージ電圧がなぜ発生するのか、ケーブル長とどう関係するのか、どう対策すべきかを実務レベルでわかりやすく解説します。
サージ電圧とは、インバータのスイッチング時に発生する瞬間的な過電圧 のことです。
600V系BLDCでは、
600V → 900V
600V → 1200V
といった“跳ね上がり”が普通に起こります。
このサージが
・絶縁破壊
・コロナ放電
・ベアリング電食
・モータ寿命低下
の原因になります。
理由はシンプルで、インバータの高速スイッチング(dv/dt)とケーブルのインダクタンスの組み合わせです。
インバータが高速で電圧を切り替えると、ケーブルのインダクタンスが“電流の変化に抵抗”し、その反動で電圧が跳ね上がります。
これがサージ電圧です。
ケーブルには必ず インダクタンス(L) が存在します。
ケーブル長が長いほど
→ インダクタンスが増える
→ 電流変化に対する反発が大きくなる
→ サージ電圧が大きくなる
さらに、ケーブルは“伝送線路”として振る舞うため、反射(リフレクション) が発生します。
サージ電圧は以下の式で概算できます。
反射電圧 Vref は、
ケーブルの特性インピーダンスとモータ側のインピーダンス差で決まります。
ケーブルが長いほど
・反射が増える
・反射が重なる
・サージが倍増する
という現象が起きます。
・例1:インバータとモータが20m離れている
600V → 900〜1100Vのサージ が発生
・例2:ケーブルが30m以上
600V → 1200V超え も珍しくない
→ 絶縁破壊の典型パターン
・例3:SiC-MOSFETを使った高速スイッチング
dv/dtが高いため、サージがさらに増幅
SiC-MOSFETは
・dv/dtが高い
・スイッチングが速いため、サージ電圧が増えやすい。
つまり、SiCを使うとケーブル長の影響が一気に大きくなるということです。
SiC-MOSFETとdv/dtの関係についてはSiC-MOSFETのdv/dtと絶縁設計の関係をご覧下さい。

※SiC-MOSFETの場合はこの表よりもさらに厳しくなる
① ケーブル長を短くする(最重要)
インバータとモータの距離を
できれば10m以内、理想は5m以内にする。
② dv/dtフィルタを入れる
インバータ側に
・dv/dtフィルタ
・サイン波フィルタ を入れると、サージ電圧が 1/3〜1/10 になる。
③ ケーブルをシールド・ツイストペアにする
反射を抑え、サージを低減できる。
④ モータ側にRCスナバを入れる
巻線端子にスナバ回路を入れることで、
サージのピークを吸収できる。
⑤ 絶縁設計を強化する
・スロットライナー厚み増加
・コイルエンド絶縁強化
・VPI含浸
・コロナ対策
→ サージに“耐える”設計
絶縁設計についてはこちらをご確認ください。
高電圧ブラシレスモータの絶縁設計
SiC-MOSFETのdv/dtと絶縁設計の関係
サージ電圧は、600V系BLDCの絶縁破壊の最大要因です。
特に
SiC-MOSFET × 長いケーブル × 高dv/dt
という組み合わせは非常に危険です。
・ケーブル長が長いほどサージ電圧は増える
・600V → 1000V超のサージは珍しくない
・絶縁破壊・コロナ放電・ベアリング電食の原因になる
・dv/dtフィルタ・ケーブル短縮・絶縁強化が必須
銀河電機では、
600V系BLDC × SiC-MOSFET × サージ対策 を含めた総合的な設計提案が可能です。