600V系ブラシレスモータ(BLDC)の絶縁設計では、VPI:真空加圧含浸が極めて重要です。 特に、①高電圧(600V級)、②高dv/dt(SiC-MOSFET)、③サージ電圧(900〜1200V級)、④コロナ放電といった過酷な条件では、VPIを行うかどうかで絶縁寿命が大きく変わります。
本記事では、VPIとは何か、なぜ必要なのか、どんな効果があるのかをわかりやすく解説します。
VPIはVacuum Pressure Impregnationの略で、日本語では真空加圧含浸のことです。
コイルの内部を真空状態にして、コイル内部の空隙(すきま)を樹脂で完全に埋める絶縁処理のことです。
工程は以下の通り:
1.コイルを真空槽に入れる
2.真空引きして内部の空気を抜く
3.絶縁ワニス(樹脂)を注入
4.加圧して樹脂を深部まで浸透させる
5.加熱硬化して固める
これにより、巻線内部の微小空隙が完全に樹脂で満たされ、絶縁強度が飛躍的に向上します。
600V帯では、以下の現象が必ず発生します。
・高dv/dtによる電界集中
・サージ電圧(600V → 1000V級)
・コロナ放電
・絶縁紙の劣化
・巻線の振動・摩耗
これらの現象は すべて“空隙”があると悪化 します。
つまり、空隙をなくす=絶縁トラブルの根本原因を潰すということです。
① コロナ放電を防ぐ(最重要)
コロナ放電は 空隙で発生 します。
VPIで空隙を埋めることで、
コロナ放電の発生源を物理的に消滅 させます。
→ 600V系BLDCの寿命を大幅に延ばす
② 絶縁強度が大幅に向上
樹脂が巻線全体を固めるため、
・耐圧
・沿面距離
・絶縁抵抗
が向上します。
特にSiCインバータの高dv/dtに対して強くなります。
③ サージ電圧に強くなる
巻線内部が固まることで、サージ電圧による局所破壊が起きにくくなる。
600V → 1000V級のサージでも耐えやすい。
④ 巻線の振動・摩耗を防ぐ
高周波PWMでは巻線が微振動します。
空隙があると摩耗 → 絶縁破壊につながります。
VPIで固めることで、振動による絶縁摩耗を防止できます。
⑤ 熱伝導が良くなる(冷却性能向上)
空隙がなくなることで、巻線 → コア → フレームへの熱伝導が改善。
→ 高出力BLDCの温度上昇を抑制
→ 水冷モータとの相性が良い
600V系BLDC × SiCインバータ × 長ケーブルという条件では、VPIなしは非常に危険です。
・典型的な故障モード:
・コロナ放電 → 絶縁紙の劣化
・巻線の局所破壊
・サージ電圧での絶縁破壊
・摩耗によるショート
・ベアリング電食の悪化(高周波電流増加)
VPIなし=寿命が1/3〜1/10になるケースもあります。
通常の含浸とVPI(真空加圧含浸)の比較です。

600V系DCBLでは、通常含浸では性能不足となる可能性があります。
VPI含浸は、600V系ブラシレスモータの絶縁設計において最も重要なプロセスのひとつです。
特に、
・SiC-MOSFETの高dv/dt
・サージ電圧
・コロナ放電
・高出力・高温環境
といった過酷条件では、VPIの有無がモータ寿命に大きな影響をあたえる と言っても過言ではありません。
巻線の絶縁向上(改善)にはBMCモールドもあります。
VPIとBMCモールドの比較説明は こちらをご覧ください。
銀河電機では、600V系・5〜10kW級BLDCに最適なVPI含浸・絶縁設計・コロナ対策 を行っています。