600V系ブラシレスモータ(BLDC)をインバータで駆動する際、絶縁破壊と並んで最も深刻なトラブルが「ベアリング電食(電蝕)」 です。特に、SiC-MOSFET × 高dv/dt × 長ケーブルという組み合わせでは、ベアリング電食が従来の数倍の速度で進行します。 本記事では、ベアリング電食の仕組み、SiC時代に深刻化する理由、実務で本当に効く対策 をわかりやすく解説します。
ベアリング電食とは、ベアリング内部に高周波電流が流れ、転動面が電気的に損傷する現象=いわゆる転動面の荒れです。 です。
特徴
・目に見えない微小な放電が繰り返される
・グリースが炭化する
・転動面に“フルーティング(溝状の模様)”ができる
・最終的には異音・振動・焼き付きに至る
初めは転動面のあれで、小さな異音から始まり、静かに進行し、気づいたときには手遅れというのが最大の問題です。
インバータ駆動では、インバータの高周波スイッチングにより、容量性結合された軸に高周波誘導電圧が発生します。
これがベアリングを通ってアースへ流れようとするため、ベアリング内部で微小放電が起きます。
原因は主に3つ。
① dv/dt(電圧立ち上がり)が高い
インバータの高速スイッチングにより、シャフトに高周波電圧が誘起 される。
② モータケーブルの寄生容量
ケーブルの寄生容量を通じて、高周波電流がモータ側に流れ込む。
③ シャフトとフレーム間の容量結合
シャフトとフレームの間に“コンデンサ”が形成され、高周波電流がベアリングを通過 する。
回転中は、ベアリングのボールと転動面の間に油膜が形成されるため、絶縁状態です。
軸に誘導される電圧が大きくなり(蓄積も含め)、掲載された絶縁の限界を超えれば微小放電が生じます。
この微小放電でいわゆるEDM:Electrical Discharge Machiningで表面のあれが生じます。
SiC-MOSFETは
・dv/dtが非常に大きい(1〜10 kV/μs)
・スイッチングが高速
・高周波成分が多い
という特徴があります。
これにより、ベアリングに流れる高周波電流が従来の数倍に増加します。
✔ Si-IGBT時代
・dv/dtが低い
・電食は発生するが進行は遅い
✔ SiC-MOSFET時代
・dv/dtが10〜50倍
・高周波電流が増加
・電食が急速に進行
・数ヶ月でベアリングが破損する例もある
600V系BLDC × SiC-MOSFET では、ベアリング電食は“必ず対策すべき問題” です。
・異音(ゴロゴロ音)
・振動の増加
・グリースの黒変(炭化)
・フルーティング(溝状の模様)
・ベアリングの早期破損
特にフルーティングは、高周波放電が繰り返された証拠 です。
① 絶縁ベアリングを使用する(最も効果的)
・内輪または外輪を絶縁コーティング
・セラミックボールベアリングも有効
→ 電流がベアリングを通らなくなる
② アースブラシ(シャフトグラウンドリング)を追加
シャフトに直接アース経路を作り、ベアリングを通らずに電流を逃がす。
→ 産業用モータで最も一般的な対策
③ dv/dtフィルタを入れる
インバータ側に
・dv/dtフィルタ
・サイン波フィルタ
を入れると、高周波電流が大幅に減少。
→ 電食・サージ・絶縁劣化のすべてに効く
④ ケーブル長を短くする
ケーブルが長いほど高周波電流が増えるため、インバータとモータの距離を短くする。
⑤ モータフレームのアース強化
アースインピーダンスが高いと、高周波電流がベアリングに流れやすくなる。
→ 太いアース線・短い経路・確実な接続
⑥ 絶縁設計の強化(巻線側)
・コイルのVPI含浸
・絶縁紙の強化
・コロナ対策
→ 高周波電流の発生源を抑える
600V系5〜10kW級BLDCを扱うメーカー が採用すべき対策は、
✔ 絶縁ベアリング
✔ アースブラシ
✔ dv/dtフィルタ
✔ ケーブル長の最適化
✔ 絶縁設計の強化(巻線・スロット)
この5点セットで、
ベアリング電食のリスクはほぼゼロに近づきます。
ベアリング電食は、600V系DCBL × SiC-MOSFET × 高dv/dt × 長ケーブル という現代のモータ駆動環境で急増している“静かな破壊”です。
・高周波電流がベアリングを通過
・微小放電が繰り返される
・フルーティングが発生
・最終的にはベアリング破損
SiC-FET時代では、従来のSi-IGBT時代の数倍の速度で進行 します。
そのため、
・絶縁ベアリング
・アースブラシ
・dv/dtフィルタ
・ケーブル長最適化
・絶縁設計強化
といった総合的な対策が必須です。
銀河電機では、600V系BLDC × SiC-MOSFET の電食対策・絶縁設計・冷却設計まで含めた総合提案が可能です。