モータマグネットの高性能化により、DCBLモータは小型化と高出力化が急速に進んでいます。その一方で、モータ外形が小さくなるほど熱を逃がす表面積が減少するという新たな課題が顕在化しています。 DCBLモータの性能を最大限に引き出すためには、こうした発熱を適切に処理する冷却方式と熱設計が欠かせません。 特に10〜20kWクラスの産業用DCBLモータでは、発熱が性能・寿命・信頼性に直結するため、冷却方式の選定を誤るとトラブルの原因になります。
本記事では、建機・圧縮機・搬送装置などの産業機器でDCBLモータを使用する際に押さえておきたい冷却方式の特徴と、熱設計の実務ポイントをわかりやすく解説します。
巻線に電流が流れることで発生する抵抗損失です。
銅損は電流の二乗に比例して増加するため、負荷が大きいほど発熱が増えます。
また、インバータ駆動特有の電流リップルも銅損を増加させる要因となります。
鉄損は、
・ ヒステリシス損(磁化・消磁の繰り返しによる損失)
・ 渦電流損(時間変化する磁束により鉄心内に流れる電流による損失)
の2つに分けられます。
鉄損は回転数に強く依存し、高速回転時に大きく増加します。
一方で、負荷トルクの大きさにはほとんど依存しません。
代表的なものに、
・ 軸受摩擦損
・ 風損(ファンやロータの空気抵抗)
があります。
機械損は回転数に強く依存し、無負荷でも必ず発生します。
特に高速回転では急増しやすく、潤滑状態や軸受構造、ロータ形状などの影響を受けやすい損失です。

10〜20kWクラスのDCBLモータでは、冷却方式の選定が性能・寿命・信頼性に直結します。
ここでは、産業機器でよく採用される空冷・水冷・油冷の3方式について、それぞれの特徴と適用ポイントを整理します。

空冷は、モータ外周に取り付けたファンによって空気を循環させ、熱を放散する最もシンプルな冷却方式です。
特徴
・ 構造がシンプル
・ コストを抑えやすい
・ メンテナンス性が高い
メリット
・ 配管が不要で扱いやすい
・ 小型機器や軽負荷用途に適する
デメリット
・ 冷却能力に限界
・ 高出力・連続運転には不向き
適した用途
・ 小型搬送装置
・ 軽負荷の産業機器
断続運転が中心の設備
10〜20kWクラスでは、空冷単体では冷却が不足するケースが多く、補助冷却や熱設計の工夫が必要です。
水冷は、モータ外周に設けた水路に冷却水を循環させる方式で、高出力BLDCモータで最も一般的です。
特徴
・ 冷却能力が高く、温度上昇を安定して抑えられる
・ 高回転・連続運転に強い
メリット
・ 銅損・鉄損による発熱を効率的に除去
・ 高効率運転を維持しやすい
・ 圧縮機など熱負荷の大きい用途に最適
デメリット
・ 配管・ポンプなどの冷却設備が必要
・ 設置スペースが増える
適した用途
・ 圧縮機(コンプレッサ)
・ 大型搬送装置
・ 連続運転が多い産業設備
10〜20kWクラスでは、水冷が最も採用される冷却方式です。
油冷は、油圧システムの作動油や専用オイルを循環させて冷却する方式で、建機用途との相性が非常に良いのが特徴です。
特徴
– 冷却と潤滑を同時に行える
– 衝撃・粉塵など過酷環境に強い
メリット
– 高負荷・高トルク運転に強い
– 建機の油圧回路をそのまま活用できる
– 軸受やギアの潤滑性が向上
デメリット
– 設計が複雑
– 油温管理が必要
適した用途
– 建設機械(油圧ポンプ駆動など)
– 重負荷・衝撃の大きい用途
– 高トルクが求められる産業機器
建機の電動化が進む中で、油冷BLDCの採用は確実に増えています。
DCBLモータの熱設計は、単に冷却方式を選ぶだけでは不十分です。
「どこで熱が発生し、どこに熱が滞留し、どのように逃がすか」
を体系的に考える必要があります。
ここでは、産業機器向けDCBLモータの熱設計で特に重要となるポイントを整理します。

許容温度は絶縁クラス(F種・H種など)で決まり、寿命に直結します。
ケース温度だけで判断せず、巻線温度を基準に評価することが重要です。
・ 圧縮機 → 高回転・連続運転 → 水冷が最適
・ 建機 → 衝撃・粉塵・油圧系 → 油冷が有利
・ 搬送装置 → 加減速が多い → 水冷 or 空冷+補助冷却
用途に応じた冷却方式の選定が不可欠です。
キャビネット内温度、スイッチング損失、ケーブル発熱など、モータ以外の熱源も含めて温度管理する必要があります。
・ 巻線温度(最重要)
・ ケース温度
・ 冷却水温度または油温
これらを適切に監視することで、過熱トラブルを未然に防げます。
巻線温度は直接測定が難しいため、サーミスタやPTCを適切な位置に配置することが重要です。
熱設計では、
温度上昇(ΔT)=発熱量(W)× 熱抵抗(Rth)という基本式が重要です。
・ 熱抵抗が高い → 温度が上がりやすい
・ 熱抵抗が低い → 温度が上がりにくい

熱抵抗を下げることが10〜20kWクラスの熱設計の肝になります。

周囲温度が高いと許容出力が低下します。
屋外用途では最悪条件での温度上昇を必ず確認する必要があります。
FEM(有限要素法)による磁場解析(EFA)により損失分布やホットスポットを把握できます。
冷却流路の詳細検討が必要な場合は、外部のCFD解析を組み合わせることで、過剰なコストをかけずに最適な熱設計が可能です。
※ EFA(Electromagnetic Field Analysis):磁場解析
※ CFD(Computational Fluid Dynamic):流体解析
※ FEM(Finite Element Method):有限要素法
原因:冷却不足、損失増大、インバータ設定不良、周囲温度上昇
対策:冷却方式の見直し、巻線仕様の最適化、インバータ設定調整、冷却水管理
ポイント
過熱は最も多いトラブルであり、温度上昇の原因が “損失側” か “冷却側” かを切り分けることが重要です。
原因:冷却水流量の変動、油温上昇、外気温変動、熱だまり
対策:流量安定化、油温管理、流路見直し、FEMでホットスポット確認
ポイント
温度変動は、冷却系の安定性不足が原因であることが多く、モータ単体ではなくシステム全体での対策が必要です。
原因:粉塵・衝撃、潤滑不足、軸受選定ミス、組立精度不良
対策:耐環境軸受、潤滑方式見直し、交換周期最適化、組立精度改善
ポイント
軸受温度は、『モータ全体の温度よりも先に異常を示す“早期警告”』になることが多く、温度監視が非常に重要です。
原因:キャビネット温度上昇、スイッチング損失、ケーブル発熱
対策:換気強化、インバータ容量見直し、ケーブル適正化
ポイント
モータの熱トラブルと思われる現象が、実はインバータ側の温度上昇が原因というケースは意外と多いです。
主な原因
原因:入口温度高い、流量不足、クーラー能力不足
対策:入口温度管理、流量監視、クーラー追加
ポイント
冷却媒体の温度が高いと、どんなに良い冷却方式でも性能を発揮できません。

10〜20kWクラスのDCBLモータでは、発熱が性能・寿命・信頼性に直結するため、冷却方式と熱設計は最も重要な設計要素のひとつです。
損失の理解、冷却方式の選定、温度監視、インバータ側の熱対策など、熱設計はモータ単体ではなくシステム全体で最適化する視点が欠かせません。
DCBLモータの高出力化が進む今、熱設計の最適化はますます重要になります。
用途に合わせた冷却方式の選定と、実務に基づいた熱設計を行うことで、DCBLモータの性能を最大限に発揮させることが可能です。
※本コラムに品質の観点も含めて解説したコラム
10〜20kWDCBLモータの冷却方式の品質への影響|技術で抑えるべきポイント
※冷却についてのコラム
次世代冷却技術とモータの融合